第3次地域農業振興計画
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15《川崎市の農業の現状と課題および期待》 多摩区の明治大学生田キャンパスで8年間、野菜の栽培研究に取り組む中で、川崎市と長野県の農業で異なると感じることがいくつかあります。まずは、気候区分の温暖地に当たる川崎市は、年間を通じて何らかの野菜が栽培できる点です。川崎市で長年農業を営まれていると気付かないかも知れませんが、野菜が年間を通じて栽培できることは、新品目や新作型などに挑戦できる強みとなります。長野県は、寒地または寒冷地に区分され、国内の夏秋野菜の大産地ですが、冬場は伏込み促成栽培などの一部を除き、野菜が栽培できません。一方、川崎市では、地域在来野菜である「のらぼう菜」(栽培マニュアルを共同作成済)をはじめ、冬場でも葉菜類やマメ類などの野菜が栽培できます。また、私は国内外の直売所を研究で巡りますが、セレサモスでは、他産地に比べて年間を通じて野菜の種類が多く、川崎市では新顔野菜もそれなりに売れています。長野県の消費者は、新顔野菜にはなかなか手が出ません。ところで、明治大学・環境気象学研究室では、麻生区黒川上地区の気候は、栃木県に類似すると報告しました。その報告は、川崎市でさらに多くの新品目や新作型などに取り組める可能性があるということです。私は令和2年4月より明治大学黒川農場長に就任しました。黒川農場には寒地および寒冷地の農業に詳しい教員がいますが、黒川上地区の冷涼な気候を活かし、冬場の寒さを活かした食味と品質を高める寒締め栽培を考えています。川崎市は、視点を変えれば、アスパラガスのような新品目や新作型などに挑戦できます。その他にも、明治大学では新品目の導入や周年栽培および輪作栽培の研究など幅広く研究しています。明治大学・川崎市黒川地域連携協議会農産物等研究専門部会との連携を強化し、都市部とのアクセスの良さを活かした労働力の省力化が可能な品目の検討や、観光農業として、既存の観光農園だけでなく、新品目への挑戦も良いかも知れません。例えば、明治大学との取り組みであれば、「採りっきり栽培」の採れたてで新鮮なアスパラガスや「ソバージュ栽培」の緑のトンネルを利用した子どもたちによる摘みたてトマトなどの収穫および試食体験です。川崎市の農業は、生産者次第で新たな挑戦が可能と考えます。第2部 〜川崎市の農業の現状と課題〜

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